( 5/ 6[火])首位陥落

 横浜戦の敗因を分析すると大きく分けて2つある。1つは前半こちらにリズムがある内に試合を決める追加点を奪えなかった点、もう1つは後半の立ち上がりからの失速&守備の崩壊である。

 追加点を奪えなかった原因の1つに本山を上げたい。この日の本山はいい動きだったと評価する人は多いかも知れない。けれど簡単にプレーしてればいいところで難しいところにパスを通そうとして、幾度となく不必要にボールを失っていた所に注目をして欲しい。本山は技術的にも、精神力的にも非常にポテンシャルの高い選手であることは間違いなく、その能力はこの試合でも発揮されていた。だからこそ、いい動きに見えるが、今の本山は中村俊輔にそっくり(無論プレースタイルの話ではない)なのである。ポテンシャルの高さを発揮しているにもかかわらず、チームに勝利をもたらさない選手。これが、今の本山の現実である。
 もちろん、追加点を奪えなかった原因が本山に完結するわけでは決してないが、小笠原が欠場する次節、本山は自らがチームに貢献できる選手であることを勝利という結果をもって証明する必要がある。本山がスタメンに復帰して、1勝1敗。今シーズンの背番号10がアントラーズを優勝に導く活躍をできるか、できないかの分かれ目、勝負所は次節だ。

 次に守備の崩壊であるが、後半の立ち上がり、選手達はハーフタイムが終わったことを知らないままピッチに立ってしまった。この集中力の欠如は中盤を始めプレスがかからない状態を引き起こし、その結果、前半はその存在さえ忘れられていた久保にチャンスを与えてしまった。
 同点後、チームとして機能していない本山を外して、"今シーズンの形"である3ボランチに一旦チームをリセットすることでセレーゾ監督は中盤のプレスの再生化をはかった。この判断自体はこの時点では問題があったわけでなく、ごく当然の判断であった。しかし、一度狂いだした歯車はチームの失速と共に相手を調子づかせてしまった。マリノスが強かったと言うより、自滅の形でマリノスに調子づかせたと言った方が正しい。
 新加入のクラウデシールはチームの長老である本田ほど効果的にチームを機能させることはできなかった。ただし、彼に問題を押しつけるのは間違いだろう、むしろそれではチームの問題点をうやむやにするだけである。クラウデシールは攻撃時には相手ゴール前にいたが、守備時には"ボランチの位置"に存在し、相手にほとんど突破を許していない。守備をしながらあわよくば得点を期待しての投入ではあるが、最低限の仕事はキッチリとこなしていたからである。
 中盤のプレスの崩壊。そこにミスを積み重ねた結果、もう失点は免れられない。完全に歯車は狂った。秋田を軸に完全にベテランらしさを失うDF陣。この日の秋田は「満員なら負けない」との言葉を完全に裏切るプレーでパワープレー時にはピッチを退く結果となった。秋田交代はスタジアムに衝撃をもたらしたが、この日の秋田に見切りをつけたセレーゾ監督は判断は英断であったと言える。少なくともこの日の大岩を外すことなど考えられなかったのだから。

 これらの要因が重なった結果、ふがいなくも自滅への道から外れることができなったのである。問題点は複雑であるが、この問題点の解決なくして1stステージの優勝はない。しかし、このほころびを完全に繕うことができた暁には完全優勝も十分に視野に入れることのできる鹿島史上最強のチーム力となるに違いない。